はじめに

長年、さまざまな情報システムについて、色々な側面から関わってきました。開発業者として要件ヒアリングから設計・実装、運用サポートまでのすべてを経験しましたし、また、システムを利用する側としても、どんな業務をシステム化したいのかという話を聞くところから始まり、それを具体的な要件にまとめ、実装業者を呼び、予算や時間のことを考慮しながらシステム化の範囲を調整し、実装内容をチェックして検収し、操作担当者に使い方を教えてサポートする、という、かなり多くのシーンを経験してきたと考えています。

端的には、システムを作るほうと、システムを作らせるほうの両方を見てきた、とも言えます。

そういう経験の中には、システムを作って納品まで完了した(された)のに、結局まともに運用ができずに終わってしまった、という例もあります。システム全部が使われない、なんてのはやや極端ですが、システムの一部として作りこんだところが、あとでよく聞いてみると実はちっとも使われていない、というくらいのことなら、案外珍しくありません。

また、そういう「使われなかったシステム、使われなかった機能」に限って、ずいぶんと時間をかけてたくさんの人間が検討に加わりながら仕様を作っていたり、どたん場になってから、やっぱりこういう動作をするよう直してくれ、という注文に応えたりしながら作られている、ということがありがちでした。

システムが使われなかったという例とはすこし異なりますが、システムの利用が担当者にとって苦痛であるという例にも遭遇したことがあります。誤入力ですぐに内部的な故障が発生する、間違ったボタンを押したことでデータ破損が起こる、または単純にデータ入力のための操作が煩雑すぎる、などなど。人間がコンピュータを使いこなしているようには到底見えず、その逆が起こっているかのようです。

こんな不幸を、少なくとも自分の手の届く範囲では起こしたくないものだなあ、といつも考えていました。

個人的な規模の取り組みでは、いわゆる基幹系と呼ばれるような巨大な情報システムをコントロールすることは簡単にはできません。ただし、そこへ入力するデータを整えることや、そこから出力されるデータを要領よく活用する、という形でなら、日々の苦痛を軽減することもできるし、時には、今まで簡単でないと思い込んでいた仕事を思いがけずうまくやれたりもします。

そんなわけで、情報システムを、またはコンピュータ一般をうまく使うやりかたについて、普段考えていることを時々書き記していくつもりです。