普通の人がやれるオペレーション

情報システムや自動化処理を設計するにあたり、誰がどんな操作をしてこれを動作させるのか、というのを考えます。

大体の場合、Word、Excel、電子メール送受信くらいの基本的な操作ができる人に無理なく覚えてもらえるのはどのくらいか、というあたりを目安にしていますが、状況によってはもうちょっと想定レベルを上げ下げすることもあります。その現場の感覚をなんとなく把握して、できれば、そういう人たちに話をしたりしてみて考えます。「こういう操作くらいならやれると思います?」なんて直接尋ねてみることもあります。

そんなことをしなくても、考えられる限り簡単な操作にする、と初めから決めれば簡単じゃないかと思われそうですが、それがいつでもベストとは限りません。かつて「かんたんケータイ」なんてものが存在しました。あらかじめ電話番号を数個登録しておいて、そこへの発信と着信、それに加えて最低限のメール送受信くらいができる、といった割り切り機能が提供されていました。そのぶん使い始めの取っ付きはよくて、操作にも迷う余地がないので、人によってはとても向いているでしょう。でも、慣れてきたら、もうちょっと細かい点にこだわった使い方をしたくなってくるかもしれませんし、もともとこの種の機械に慣れている人なら、はじめから複雑な機能をみんな使えるようにしておいてほしいはずです。習熟度によって、「簡単であること」と「いろいろやれること」のトレードオフが発生する、とも言えます。

いろいろやれること、にこだわっていくなら、何かの機能を実行するときにいろいろなパラメータを受け入れるようにして、利用者はより様々なパターンの業務をこなしやすいように作れるでしょう。その分、操作の間違いを起こしてしまう可能性も高くなっていきますが。

逆に、簡単であることに重点を置くほど、起こることは変化の余地がなく、利用者はすぐに使い慣れることができるでしょう。そのかわり、ちょっと変わったことをするべき事態が生じたときには、システム側で融通をきかせにくいせいで、かえって複雑な後始末が別途必要になる、というのが起こりやすくなります。

どちらのパターンにおいても、作るコストは案外変わりません。このトレードオフに、いつでも通用するような決定的な答えは特にありませんので、どんな仕組みが必要ですか、誰に役にたてばいいですか、というヒアリングが重要になってくる、という話に尽きます。