帳票ツールの候補はたくさんある

ひと昔前は、帳票をデザインする方法に、あまりたくさんの選択肢がなかったように記憶しています。なので、帳票専用に作られたミドルウェアを採用して、使い慣れないデザインツールと格闘する、なんてことがままありました。実際にプリントされる帳票もまあまあきれいな感じだし、ボタン一発で印刷の操作ができてシステムとうまく統合されている感じも出るし、決して悪くはありません。一般的に、開発や保守のコストは高めになると思います。

その後、HTMLの形で帳票を作っても別にいいのでは、という発想で、もうちょっと簡易に帳票を作るようなものも時々見るようになりました。情報システムのほうは、最終的にプリンタに出力するところはユーザーに任せてしまうことにして、そのかわり、HTMLをファイルとして出力して、これを適当なウェブブラウザーで開くくらいのことまでをお世話します。ユーザーはこの結果が気に入ったら印刷するなり何なりすればよいわけです。この方法だと、帳票専用に作られたツールに比べて、ちょっとキレイさでは劣るものが出力されますが、別にそんなことを気にしないような用途だってありますし、もしそうなら、最低限、内容さえちゃんと確認できればいいですよね。作る側としても、とても安価に提供できます。

Excelがコンピュータにインストールされているなら、これを帳票ツールとして使ってしまうというのもよくある発想です。この場合、ユーザー側で思う存分レイアウトを調整して(Excelですからやれますよね)、その上で、開発者のほうでは、決まったセルの上に値をプログラム的に書き込む、という方式で、最終的に印刷に耐えるような文書ができあがります。

Excelだと、明細行がいっぱいあって1ページに収まらないときにはどうするの、という疑問をもつ方がいるかもしれません。そういうときも、うまくプログラムを作って、明細部分にあたる行を内部的に増殖させて対応できますから、こういう点で限界を感じる必要もありません。

印刷するべきフォーマットがとても綿密に決められている場合があります。国や役所のルールで様式がすっかり定められている場合など。こういうときは、PDFを直接生成するようなやりかたで帳票を作るという作戦が採用できます。PDFが普及する前はこういう精密なフォーマットの印刷はいろいろ面倒でしたが、今なら、PDFはほとんどどこでも使えますし、そこに自由な内容を書き込むためのツールやライブラリがたくさんありますから、それを活用すれば、ほとんどどんな要求にも応えるような印刷物が作れます。ひとつひとつ位置や文字サイズや罫線なんかを指定するので、手間はかかりますけどね。

こんな感じに、予算感や、どのくらい見た目にこだわるか、利用者がどのくらいコントロールしたいか、などの要素によって、何かのデータを印刷するというタスクひとつとっても、いろいろなツールを適用する選択肢があります。適材適所、です。

なんなら、CSVファイルのような汎用のプレーンテキストとしてデータが出力されるだけで足りる、なんていう場面さえあるかもしれませんね。「メモ帳」アプリで開くから、必要ならそこからプリンタに出す、みたいな。